ディストリビューテッド・ネットが,64ビット暗号「RC5-64」の解読に成功した。ディストリビューテッド・ネットは解析に4年間をかけ,33万人以上の参加者が587億4759万7657ユニットの鍵空間を調べ,解読鍵を発見した。
鍵はそこにあった。周りは黄金色のすすきが一面に揺らいでいたが,まるでそこだけまだ夏が残っているように緑を広げる,大きな大きな1本の木の下。そこにあった。「残念ながら,本の中には鍵はないんです。そして,世界という一冊の書物の中にも鍵なんてない。では何処にあるのか? ひとつヒントを云いましょう。『扉を開くには,想いが必要です』」。
想いの中に鍵はあった。あの木の下だ。僕は走った。全速で走った。息は切れ,血の匂いがした,腕も足も,気を緩めたら外れてしまいそうなほど振り続けた。走るのをやめちゃダメだ。やめたら,想いの中のあの場所へは,たどり着けない。「開かない扉に存在意義などないのだから,扉には鍵が必ずある。鍵のない扉など存在しない。…普段,鍵のかかっている,心,も同じだ」。
何日走り続けたのだろう。地平線なんて本当はないんだということがわかるほど走り続けたそのとき,僕はたどり着いた。あの日と同じ夕陽の下,一面の黄金の原,でも,あの木はなかった。絶え絶えの息の中,見上げても薄明かりの星がみえるだけで,緑木はない。鍵もない。ああ,やっぱりそうなのかな。いつも欲しいものはみつからないもの。でも,そのとき。なんの意識もせずに涙は目からあふれ,地に落ちた。すると,そこから…。「欲しい鍵はいつもみつからないものさ。欲しいと思う心の扉を開く鍵も,いつもみつからない。でも,でもね。あとは,想いだけなんだ」。
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